腕時計喫茶

「微妙」な時計を愛してる

あなたの「漢」が試される?? 偉大なるムダが魅力「反逆の腕時計」たち

 優美なドレス ウォッチ、引き締まった造形を持つラグジュアリー・スポーツ。機能性を高いセンスで纏め上げたダイバーズやパイロットウォッチの数々。要するに現代においては「シュッとしたデザインの時計」に人気が集まる傾向があるわけです。使いやすいミドルサイズ以下が増えてきたのも、見た目のスマートさを求める流行と無縁ではないでしょう。その流れ自体は「時代」もありますし、それで良いと思います。

 ですが正直…「飽きを感じる」こともあるのです。甘い物ばかり食べ続けると無性に「辛い料理が食べたくなる」じゃないですか?? それと同じことが、腕時計にも起きるのですよ。実際に (;´Д`)

 

腕時計趣味の「反抗期」

 シワのない長袖シャツを着て、腕時計を巻いた自分自身の手首に目を落とすと、昨今はやたらと「良い子チャンのリスト」なんです。このニュアンスが解りますでしょうか?? 時計そのもののスマートさもそうですが、着用した状態のビジュアルがとにかく「物わかり良く」収まってしまっているのです。そうですねぇ… 腕時計をファッションの一部として追求するなら、これで一向に構わないと思います。「完成度を目指す」という点で、トータルでの纏まりは腕時計固体の魅力を云々する以前に考えておかねばならないことです。「こういうファッション傾向のある自分だから、こんな感じの時計が使いやすい」と把握しておくことは「失敗しない腕時計趣味」のためにも、大切だと思います。

 ですが、そんな「杓子定規」に進んでいく「腕時計趣味」に一抹の淋しさを感じることもあるのです。SNSで「いいね」が付かなくたって一向に構わない。何か面白い時計を己の好奇心のままに貪ってみたい… そんな時もあるのです。「大人の反抗期」みたいなものかなぁ… (;´∀`)

 

正しいリストで満足すべきか、しかし…

 この先しばらくの間は、クロノグラフなら「40~38ミリ」、3針なら「38~35ミリ」辺りのケース幅が持て囃される時代が続くかも知れません。確かに使いやすいですもん。

 小さいと言うことは存在を消す「ステルス性能」が高いということですから、イコール「服装を選ばずに使える」メリットがあるということでもあります。私もその辺りの大きさのクロノグラフを買い求めて、そのユーティリティーな使い勝手の良さにやられました (*´∀`*)

 ただ、しっくり収まったリストからは、ユングが言うところの「リビドー」を得られないのです。上品に出来上がってしまった「作品」とも言うべき手首から感じるのは一種の「満足」であり、「渇望」「不安」を発露とする「反逆のエネルギー」とは無縁です。正しいバランスで成り立った「正しいリスト」自体は満足すべきものですし、それは目標にすべきものでもあります。ただ「完成形」とは、同時に「終点」でもあるのです (;´Д`)

 

 

Like Rolling Stone

 数だけはそれなりに増えてしまった自身のコレクションを眺めながら、僅かな満足と同時に沸き上がる別種の思いがあります。それが「反逆が足らん!!」という感情です (;´Д`)

 どうも昨今の私は自身の年齢や立場なんかを過剰に意識し過ぎる余り、自分自身を社会規範の「型」にはめてしまう傾向があるようです。そしてそれこそが「老化現象」であると最近気が付きました。

 己の肉体に始まってしまった「枯れ」に関しては、すでに如何ともし難いかもしれません。ですが、好きで始めた腕時計趣味まで、同じように枯れる必要はないでしょう。この先も、せめて趣味の世界でだけは「転がって」いきたい… そのための「乾坤一擲」としてスパイスの利いた時計が欲しい… そんな風に考えたわけです。

 そこで今回、この先の「コレクションに加えるべき時計」として「反逆の一本」をテーマに探してみました。イメージとしては「偉大なるムダを具現化した時計」。要するに、昨今の流行の「真逆を行った」存在… 「反逆の腕時計たち」でございます。「物わかりの良い大人になんかなりたくない!!」そんなアウトローな貴方にこそ届く企画だと信じて書きます。さあ付いてこい!! 行くぜ!! 野郎ども!!

 

無駄にデカい時計で男の気骨を示せ!!

パネライ ラジオミール 1940 3デイズ アッチャイオ 47mm(PAM00662)

出典:https://www.panerai.com/jp

 これまでに何度も「反逆」の意図から際どい時計に目が向くことがありました。小ぶりな時計が流行るこの世の中に、敢えてオーバーサイズを身に着ける密やかなレジスタンス。「アンタそれ、デカすぎるから!!」と誰ぞに揶揄されようと、お構いなしに突き進む「男道」。そこに感じる愉悦が存在するからこそ「パネライ」のように根強く指示されるブランドがあるのだと思います。

 「次は47ミリ買って下さい!!」… 昨年の1月末、パネライのブティックでスタッフの方に言われた一言です。「お客さんのような方にこそ47ミリ!!」と、解るような解らないような薦め方をされた様子がこちら…

ラジオミール 1940 3デイズ アッチャイオ 47mm(PAM00662)

 銀座のパネライさんで、うっかり手首に載せてしまった47ミリ幅の「ラジオミール」でございます。着けてみると案外と自然な感じで収まった印象で「47ミリもありやな!!」なんて気持ちになったのを覚えています。

 考えてみれば同じ47ミリ幅でも「ルミノール」の場合はあの「リューズガード」がある分、見た目の凶悪さでははるかに勝ります。着けこなすにはプロレスラーの如き分厚い体躯が必要かもしれません (;´Д`)

 しかし、だからこそなんですよ!! そもそも男の人生は「攻めてナンボ」じゃないですか?? 良識ある誰かさんが止めようが苦言を呈してこようが、お構いなしにドカンと一発決めてやれば良いんですよ。似合うか似合わないかが他者評価に寄るものなのはその通りです。ですが所詮「最後は自分」なのです。「オレが着けたいから、このデカい時計を着けてるんだ!!」と胸を張ってさえいれば、それこそが特段の個性となり、男の魅力になるのです。

 冷静に考えたら高級時計なのに、パネライを着けている人が「ドヤっている風」に見えないのは、「オーバーサイズの時計を着ける覚悟」が自然と伝わるからかもしれません。それこそが「粋」「格好良い」のだと思います (*´∀`*)

 

無駄に多機能な時計でアウトローを決めろ!!

オメガ スピードマスター スカイウォーカー X-33(318.90.45.79.01.001)83万6000円

出典:https://www.omegawatches.jp/

 実は… 本気で欲しいと狙ってるんです。オメガさんのスピマス 「X-33」を。いや待て待て!! オレの… オレの話を聞けぇー(笑)

 ESAによる認定済みのクオーツムーブメント「キャリバー5619」。高精度の温度補正機能を搭載し、液晶ディスプレイとダイアルの針を動かす変態的な仕様が男の魂にグサグサと刺さります。さらには3つの異なるタイムゾーン、クロノグラフ、タイマー、MET(打ち上げ後経過時間)、PET(途中経過時間)、3つのアラーム、パーペチュアルカレンダーなどを搭載。どう考えても一般人が「一生使わない機能」がてんこ盛りです (;´Д`)

 グレード2のチタンを使用したケースは幅45ミリ、厚さ14.7ミリのわがままボディを誇りますが、それでも重量は114グラムで収まっていますから、チタンを採用した甲斐があったというものです。さりげなく3気圧防水は確保してたりして。

 セラミック製のベゼルが何気に美しく、アナデジの異形でありながら隠しきれない高級感を醸し出す様はさすがの高級ブランド「オメガ」。腕時計愛好家の界隈でも専門雑誌でもほとんど取り上げられることはありませんが、実は皆さん気になってるんじゃないですか?? 

 だってオメガでありながら、まず巷で被ることはないはずですし、余裕のありすぎる高機能でいざという時(??)に頼れる時計であることは間違いありません。所謂、女性にモテる時計ではないと思いますが、その代わり、ガチな腕時計マニアのお歴々には大絶賛されると思います。「アンタ!! チャレンジャーやな!!」という意味で(笑)

 ってなわけで、時計で女性の視線を集めたいなんて金輪際考えない「男の中の色男」にこそ、私はこの「変態高機能オメガ」をお薦めします (*´∀`*)

 

シチズン プロマスター スカイ(JY8074-11X)7万7000円

出典:https://citizen.jp/

 魅惑の「変態デジアナ」をもう一丁!!欲しいけど「X-33」は高すぎるんだよなぁー実際… と半ば諦めかけた私を救ってくれそうなのが、こちらの「JY8074-11X」でございます。

 はぁ… 久々にシチズンが刺さってます。こういうごちゃごちゃした時計を作らせたら、ホントにシチズンさんは世界一なんじゃないでしょうか?? よくぞ纏めたよなーって時計が多いんですよ。

 纏めた… といっても実際は「はっちゃけまくった時計」です。ケース幅45.4ミリ、厚みは13.9ミリ。間違いなくデカい時計です。ですが、これだけ複雑なダイヤルにある程度の視認性を持たせるためには、45.4ミリでも最小なのではないかと思います。私なんて、買ったは良いが老眼で情報が読み取れない可能性だってありますからね(汗)

 そんな老眼にはキツイかもしれない機能群ですが… 強烈です。見ちゃいます?? えーっと行きますよー (;´∀`)

 充電警告機能、過充電防止機能、パワーセーブ機能、パーペチュアルカレンダー、1/100秒クロノグラフ(24時間計)、ワールドタイム(43時差)、UTC表示、任意設定都市表示、サマータイム機能、デュアルタイム、ワールドカレンダー、ローカルタイム、パーフェックスマルチ3000(JIS1種耐磁、衝撃検知機能、針自動補正機能、世界4エリア受信)… などなどです。だいぶ端折ってこれです(笑)

 恐ろしいのはこれだけの機能を搭載して、フル充電時の稼働時間が「約3.5年(パワーセーブ作動時)」に及ぶスタミナでしょう。そして「スカイ」… つまりパイロットウォッチの括りでありながら、当たり前のように「20気圧防水」を実装してくる日本製の恐ろしさ。まさに「オーバースペック」。これで魂が揺さぶられない男が… いや「漢」がいるかって話ですよ!! ( ー`дー´)

 

無駄なラグジュアリー路線に蹴りを入れろ!! 高級時計なのに「チープさ」が売り

ブライトリング エンデュランス プロ(X82310281B1S1)44万0000円

出典:https://www.breitling.com/jp-ja/

 こういうのを忘れないうちは「ブライトリング」さんもまだまだ大丈夫だと思うんです。こういう「キワい時計」を作ってくれるうちはね (*´∀`*)

 忘れた頃に採用してくるブライトリング オリジナル素材「ブライトライト」。この素材自体は決して高級感を感じる物ではありません。ハッキリ言うと安っぽいです。ですが私はこの素材が大好きなんです。理由は幾つかありますが… 例えるなら私はこの素材を「無印良品」で言うところの「MDF」だと考えているのです。あの木粉をぎゅっと集積したような素材のことです。

 MDFの小物や家具はどれもこれも安っぽく見えます。正直、段ボールの固いヤツくらいの質感です。ですがそれこそが魅力なんですよ。あの安っぽさが可愛らしさにも直結して「何もかもをMDFで揃えたい!!」なんて思わせるのです。要するに「ブライトライト」にも私は同じ印象を持っているのです。

 安っぽいけど愛らしい。使っているうちにツヤが出てくる性質も味があります。見た目に関しては使えば使うほど、安っぽさが消えてシブい素材感に変化するはずです。

 チタンの3.3倍、ステンレススチールの5.8倍も軽く、非磁性、熱安定性、低刺激性の「ブライトライト」。傷や摩擦、腐食に対しても耐性を備えており、むしろ皮膚に密着して使う腕時計の素材としてはベストなのではないでしょうか?? もっと色んな時計に採用すれば面白いのになぁ~と思います。ナビタイマー辺りで使ったら周りの見る目も変わりますよね?? 

 高性能なスーパークオーツであるキャリバー「ブライトリング 82」は温度補正機能を搭載したクロノグラフです。サブダイヤルとして1/10秒、30分計を配置。防水も10気圧を確保していますし、普段使いで何ら困ることのない時計だと思います。

 ケースは幅は44ミリ、厚みは12.5ミリ。この期に及んで「アンタそりゃあデカいよ!!」… そんな意地悪なことを言っちゃうわけですね?? ならば驚くなかれ!! 重さはたったの「65グラム」です!! そうなの、肩にティンカーベルが乗っかったくらいの重さしかないのです(ティンカーベルの体重なんて知りませんけどね)

 何にせよ「44万円」という、庶民の私からすれば十分に「高級」の部類に入るお値段でありながら、ブライトライトやオモチャっぽい色使いが醸す「チープ感」こそが魅力という、皮肉の効いた「反逆の一本」「エンデュランス プロ」という時計なのです。その得も言われぬアンビバレンツに男心を射貫かれた貴方なら… きっと買いです(笑)

 

無駄に変なカタチだって?? これが「男の個性」ってもんだぜ!!

シーマスター プロプロフ 1200m コーアクシャル マスター クロノメーター (227.32.55.21.03.001)204万6000円

出典:https://www.omegawatches.jp/

 驚きましたねぇ… まさかあの「プロプロフ」を2023年の新作として見ようとは。「水深6000メートル」まで潜ることのできるプラネット オーシャン「ウルトラ ディープ」が発表されたとき、セールスという世知辛い理由以外でも、プロプロフの本質的な存在価値が失われたのかもしれないと危惧したくらいですから、新作として発表された「プロプロフ」を見た際の安堵は確かにありました。要するに「オメガさん… アンタ男の心ちゅーもんが解ってるやないか!!」ですよ。

 セールスで真面目に考えたら、馬鹿売れする時計ではないでしょうし、ビジネスの軸に据えるべきでも優先して開発するべきでもない時計です。届けるべきターゲットが狭すぎるからです。一部に熱狂的なファンがいるにしても、それだけでは作り続ける意味がありません。その最たる例が「ミルガウス」です(泣)

 「プロプロフ」という時計は「機能性の獲得は同時に美の追求でもある」というバウハウスの神髄が、表面的な事象を現したものではないことの証左でもあるのです。どうです?? プロプロフの形態、一見して格好良く見えますか?? (;´∀`)

 私の考えを先に述べると、それは「不格好を極めることが如何に格好良いか」という言葉に集約されるでしょうか。要するに機能を獲得するための英智が形として現出したとき、それを理解できた者の目には例えどんな異形であっても、全幅が「55ミリ」と馬鹿デカかったとしても「異様に格好良く」見えちゃうのです。

 例えば、1983~84年に放送され、不朽の名作の呼び声も高いアニメ「ボトムズ」に出てくる人型兵器「AT」が未だに崇拝されているのは、機能性の理解を視聴者にこれでもかと刷り込んだからこそだと思うのです。確かに、二本脚で歩くより滑った方が早く移動できると思いましたし、機能ごとに使い分けるレンズの説得力には痺れました。

 要するに、プロプロフの魅力はボトムズのATと同じタイプの説得力を持って、機能を理解した腕時計好きの心に刺さるのです。そして2023年は「サマーブルー」という名のカラーリングでファミリー化されたシーマスターの「最高級品」として降臨。今風にモデファイされた小洒落たルックスで耳目を騒がせてくれました。

 「解る人には解る」… ここにゾクリと身震いを感じた方、それはきっと貴方の中の「男」が反応しているのです。「解る!!」或いは「解りたい!!」と思った方なら、今すぐ「プロプロフ」を買いに走ったとしても後悔はしないはずです (*´∀`*)

 

最後に… そして、転がり続ける

 結局のところ、私の腕時計趣味は「無軌道であること」に価値を見出す傾向があるのでしょう。方向性を絞ってブティックのショーウインドみたいに統制の取れたコレクションに憧れたときもありますし、目指そうとしたこともありました。ただ、私には全く向いていなかった。理由は私の「飽きっぽい性格」です。腕時計のタイプが揃ってしまうと、それを着ける自分の感情が揺さぶられることも少なくなりますから、機微が乏しくなって、段々とつまんなくなっちゃうんですよねぇ (;´Д`)

 皆さんは違うかも知れませんが、私が腕時計に託す想い、或いは託している使命はとても幅広いのです。ぶっちゃけ「そこまで求めるか!?」と思わないでもありません。ですが、そもそも腕時計を欲しくなる発露がバラバラなので、その時の感情に合わせて購う腕時計も自ずとバラバラになってしまいます。

 嬉しいときに欲しくなる腕時計と、落ち込んだときに欲しくなる腕時計はまるで別種の物です。そして、何となくエネルギーが足らないと感じる日々が続けば、欲しくなるのは「鼓舞してくれる腕時計」ということになります。

 今回、書き連ねた「強烈な腕時計」たちは、ここ数週間のうちに自然と目が止まったものばかりです。ムダに頑丈だったりムダに多機能だったり… 自分がエネルギッシュに動けている状態なら、恐らくはそういったオーバースペックが気になることもなかったかもしれません。

 弱っているのかもしれないですねぇ… 故に最近の私はそれらオーバースペックに「頼り甲斐」を感じるのかもしれません。自分に足りない熱量を腕時計が補ってくれるのではないか… そんな風に見えるのだと思います。

 先程「飽きっぽい性格」と申しましたが… 飽きたくはないのです。絶対に。そういう意味では、アンティークとして手に入れた小さなゼニスや、これから手に入れちゃうかもしれない「無駄に存在感のある時計」が、所謂「ゲーム チェンジャー」になってくれるはずです。停滞した好奇心に刺激を与えることで、現状のコレクションに対しても新鮮な気持ちで向き合うことができると思っています。やっぱり必要だな!! 強烈な一本が (*´∀`*)

 機能やブランド内での存在意義を理解すれば、これら「強烈な腕時計」に対する反応が好意的に変わることは間違いないでしょう。ただ、着けて「似合うかどうかは別問題」です。何年使ったって浮きっぱなしかもしれないのです。

 例えば「あの人、ムダにデカい時計してるね」… 口の悪い誰かさんから、そんな風に揶揄されることがあるかもしれません。しかし、しかしですね、そんなことで凹む必要は全くないのですよ ( ー`дー´)

 「浮きっぱなしの時計」… 良いじゃないですか!! 安定的に似合であろう時計に逃げなかった貴方こそ「rock'n'roll」の体現者です(笑)

 これら「反逆の腕時計」をその身に帯びた瞬間から、貴方の魂は「転がり続けて」いるのですから (*´∀`*)