腕時計喫茶

「微妙」な時計を愛してる

慌てて買いに行く前に… 『ブランパン スウォッチ』で注意すべきこと

 「フィフティ ファゾムス」のオマージュ スウォッチ「ブランパン スウォッチ」の販売が始まりました。まーた、休日のたびに不毛な「行列」「ストア詣で」が始まるのかと思うとやり切れません。絶対に買えるならまだしも、それこそ「タイパ最悪の行為」ですからね。ぶっちゃけ、今ストアに行っても血眼の転売ヤーとかち合うだけでしょう。ですから、ただただイノセントに「ブランパン スウォッチが欲しい!!」と願う皆さんに私がお薦めしたいのは「普通に買えるようになってから買いませんか??」ってこと。

※関連記事でございます。

 

 

「ブランパン スウォッチ」が欲しい方、一旦落ち着きましょう!!

出典:https://www.swatch.com/

 私も「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」の際は渋谷のスウォッチストアさんに何度も足繁く通って、何度も打ちのめされた経験がございます。店員さんにしても、一日に何度このセリフを言わなきゃいけないの?? って顔で「申し訳ありませんが、ございません」と繰り返すしかないのです。あれはメンタルやられますよねぇ (;´Д`)

 当たり前ですが、お店とお客にとって一番ハッピーなのは「存在する商品をサクッと売る(買う)こと」に尽きます。わざわざ出向いて「ありません」と言われる。無いものをしつこく出せといってくる客に「すみません」と断りを入れる… そのどちらもが生産性ゼロの行為ですから、そんなことで折角の休日を無駄にしないようにして欲しいと思います。

 

 ですので、確実に「買える」タイミングを「X(旧ツイッター)」などの情報から掴んで、少しでも確度を上げてから動くのが良いでしょう。「今すぐ、何が何でも欲しい!!」… その気持は痛いほど解ります。解りますがここは一旦落ち着いて欲しいのです。「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」より盛り上がることはないでしょうから、普通に買えるようになるまでに半年~1年ってところでしょうか。でしたらその時間を利用して「ブランパン スウォッチ」のプロダクトとしての性質を理解しておいて欲しいのです。安い買い物ではないですからね!! (;´∀`)

 

使い捨て「機械式腕時計」の文化を継承する『SISTEM 51』

出典:https://www.swatch.com/

 今の感覚だと信じられないかもしれませんが、私が子供の頃は使い捨ての「機械式腕時計」が結構残っていたのです。扱いとしては「クオーツより下」。数千円で買えた機械式ですから、修理してまで使う感覚ではなかったでしょう。何とも勿体ない話ですが、使い捨てだったんですよ (;´∀`)

 私が最初に買ってもらった「スヌーピーが腕を振り回す腕時計」も機械式(手巻き)でした。青いプラケースに入ってエナメルのストラップが付いていましたっけ。

 恐らくサンリオ謹製であろう「スヌーピー時計」にしても、数千円だったと思います。壊れたとしても「新しいの買いましょう!!」で済んでしまう、そういう文化だったのです。

 

 「ブランパン スウォッチ」に搭載される「SISTEM51」も同じです。極限まで部品点数を減らしてオートメーション化を果たしたそれは、誇らしげな謳い文句「メンテナンス不要」とともに一時話題となりましたが、購入した人のブログや何かに目を通すと、大概が「3年で壊れた」「5年持たなかった」「修理はできないって言われた」など、現代の「高級機械式」の常識からは考えられない「脆弱さ」を露呈しています。私の買った「SITEM51」も2年ちょいでお釈迦になりました(汗)

 

『SISTEM 51』の修理は??

 そもそも多くの部品が意図的に一体化されているため、後々の分解などは考慮していない設計思想に基づき作られた「SISTEM51」。製造プロセスの簡略化は機械としての「不可逆性」を進めることでもあります。動力伝達のギア比などは変わらないでしょうが、癖の強すぎる設計のため、一般的なスキルの修理師さんの手には負えないのです(私が壊れたSISTEM51を近所の修理屋さんに持っていった際は、何とも言えない表情で苦笑いされました)

 例えばメンテナンス性が高いと言われるムーブメントは、修理箇所にアクセスしやすいように幾つもの工夫が施されています。分割された受け板の場合、その部分のネジを外しても他のパーツまで影響が及びません。受け板を外したらムーブメントがバラバラに分解したなんてことは、絶対にあってはいけないのです。

 ところが、そういった「ホスピタリティー」の一切合切を排除してコストを抑えたのが「SISTEM51」というムーブメントなのです。精度もパワーリザーブも、数値的に見れば立派なものです。ですが、その立派を「安心して長く楽しめるプロダクトではない」ということだけは、覚悟していただきたいと思います。

 

 「SISTEM51」に問題が生じた場合、最善の選択肢はメーカーであるスウォッチグループの公式サービスセンターに連絡することです。私はスウォッチさんに修理を頼むなんて酔狂なことをしたことがありませんが、恐らくは手っ取り早く、「ムーブメントの載せ替え」が提案されるでしょう。勿論そのコストは「ムーブメント代金+技術料+サービス」だと思います。例えば「修理費3万円」って言われたら… 私なら諦めるかなぁ~ スウォッチだし (;´Д`)

 

女性の皆さまはご注意!!『ブランパン スウォッチ』は「機械式腕時計」ですから手間がかかりますよ??

 「歯車が詰まった小さな機械がカワイイ!!」なんて宣う女性は決して多くないでしょう(いたら是非友だちに!!)

 「メンテ不要」を謳う「SISTEM51」ですが、普段の使い方は他の機械式と何ら変わりません。要するに「ゼンマイを巻いてやらないと動かない」のです。90時間のパワーリザーブがあるとは言え、油断すると止まります。

 女性の場合、毎日毎日同じ時計を身に着けるというわけにも行かないでしょう。コーディネートにおける時計のプライオリティーも高くはないでしょうし、その日の服に合わなければ「ブランパン スウォッチ」の出番は来ないのです。

 すると当然、90時間のパワーリザーブにも意味がありません。そして止まる都度、面倒な時刻合わせが必要になるのです。女性なら朝の慌ただしい時間帯にそんなことをするより、アイラインの一本も引きたいのが本音ではないかと (;´∀`)

 

 そして前段でも申した通り、機械式ゆえのトラブルも起きます。そう考えると先のモデル「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」は素晴らしい。クオーツですから頻繁な時刻合わせの必要がなく、しかも時刻は機械式より正確。結果的にリュース操作の頻度が下がりますから、ユーザーが発端のトラブルが起きにくいわけです。女性がサラッとお洒落の中に取り込むなら、間違いなく「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」の方が適しています。デザインで言っても「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」の方がフェミニンな装いに合うと思いますねぇ (*´∀`*)

 

ケース素材「バイオセラミック」、経年の影響は??

出典:https://www.swatch.com/

 特殊素材の外装「バイオセラミック」についても長期の観測が必要です。主要材はトウゴマの種から抽出した自然由来プラスチック。そこにセラミックを掛け合わせることで完成したのがスウォッチ自慢の「バイオセラミック」なのですが… プラスチックである以上、ある程度の「加水分解」は覚悟すべきかもしれません。配合によって克服している可能性もあります。しかしこの答えを出すには、まだまだ多くの時間が必要でしょう。

 プラスチック製品の「加水分解した姿」ほど、見窄らしいものはありません。そして、前回の記事でも私の友人のコメントとして書きましたが、プラ製品故に「みすぼらしくなって終わる」のがスウォッチの宿命だったりします。「そんなに何年も使わねえよ!!」って方なら問題ないでしょうが、物を大切にしたい方には「大切にさせてもらえないプロダクト」がスウォッチなのだと覚えておいて欲しいと思います。そこに割り切りがあれば、スウォッチのコレクションは短期的にではあっても、とても見栄えのする楽しい趣味になります。

 

ブランパン スウォッチのお値段「6万500円」は高いか安いか??

 まだまだ私が喚起したい注意すべきことはございますが、大きなところは以上のような感じです。そしてこれらを前提に考えていただきたいのです。果たしてこの「ブランパン スウォッチ」に大枚「6万500円」を出して良いのか… と。

 安くないお値段ですよ、ぶっちゃけ。近場だったら旅行行けちゃいますよ!? 家族4人でホテルのレストランディナー行けちゃいますよ!?

 そんな風に考える人は少なくないと思うんです。イメージ的には「ムーンスウォッチの倍額」ですからね。「そないに高いんやったら、いらん!!」と考える人がいたって、それが自然な反応です。

 一見「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」と同じコンセプトのように見える「ブランパン スウォッチ」であっても、実は訴求する消費者層が違うのではないかと考えています。要するに「ムーンスウォッチ」より一段高い「マニア層」に足を踏み入れているのではないかと。結果として購入する「可能性の母数」は少なくなりますから、スウォッチさんが狙う「二匹目のドジョウ」は、それほど大物ではないかもしれません。  

 

 スウォッチさんはそれでも十分に儲けるでしょうから良いとして、ブランパンさんのためを思えば「ブランパン スウォッチ」がある程度は売れて、そこから本家の「フィフティ ファゾムス購入者」が現れれば良いなぁ~と思います。腕時計愛好家として、これは心底そう思います。でないと、ブランパンさんにとっては何のメリットもない「弄られ損」のイベントになってしまうので (;´Д`)

 

「転売品」なんて買う必要ありません

 メルカリなんぞには早くも転売品の「ブランパン スウォッチ」が出回っていますが、絶対に手を出しちゃダメです。彼らにも生活があるのは解っていますが、転売は物の価格を不当に釣り上げ、人様に迷惑をかける行為です。そして、そこから購入することも彼らを助長させます。

 まぁ今はさしたる根拠なんてありませんが、結構早い段階で普通に買えるようになりますよ。そもそも転売ヤーから購入したものは「新品」ではなく全て「中古」です。販売店で購入して所有権が移った段階でそれは購入者の持ち物になりますから、ぶっちゃけ「未使用」かどうかなんて関係なく「一律で中古品」なのです。スウォッチの中古買いたいですか?? つまりはそう言うこと。不毛ですから買わないようにね (;´∀`)

 

 ただ、近隣にストアの存在しない場所にお住まいの方が「6万500円+交通費」と考えて転売品に手を伸ばすこともあるでしょう。それ自体は誰にも止められませんし、そこが転売ヤーの狙い目かなとも思います。でもですね、焦ることはないのですよ。「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」と同じように全国各地を回るキャンペーンがあるかもしれませんから、それからでも全然遅くないと思いませんか?? 限定品でも何でもないレギュラーモデルなんですし。

 

最後に… それでも欲しい「ブランパン スウォッチ」

出典:https://www.swatch.com/

 我ながら度し難い時計馬鹿です。それでも欲しいんですよ。「ブランパン スウォッチ」。コロンとまん丸くてカワイイですからね。実際の使い所、シーンは微妙ですけど (;´Д`)

 ちなみにワタクシ、ブランパンの「ヴィルレ」は持ってました。随分昔の話ですが、会社の先輩が着けてたブランパンに触発されて「ヴィンテージ」を買ったんです。しかしながらその時分の服装には全く似合わなくて、僅かな期間で手放した経緯があります。ですから私にとってブランパンは「いずれはキチンと攻略したいブランド」なのです。

 「ブランパン スウォッチ」がそれを叶えてくれるとは思いません。思いませんが、何というか… 場繋ぎ的な意味で持ってても良いかなぁ~と考えています。ワンポイントリリーフみたいな??

 

 プロ野球伝統の一戦、松井選手の打席に、当時阪神の監督だったノムさんが「投手遠山」をぶつけて球場を湧かせたように、お金がたまって「ファゾムス」が買えるようになるまでの「ワクワクする繋ぎ」にはなる気がします。

 きっと広い世界を見渡せば「買えるようになるまで、ミニカーで我慢する!!」みたいな買い方をする人も、そこそこいるような気がするんですよねぇ。ってなわけで、今回はこれまで!!

※やった!! 5000字で書けました(笑) 

※関連記事でございます。