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「微妙」な時計を愛してる

「ムーンスウォッチ」購入で「後悔」しないために

 「後悔」とは、個人の中にある何らかの「基準」に照らし合わせた際に、特定の行動の結果がそのラインを大きく下回った場合に湧き上がる「負の感情」です。

 例えば「食べログ」で高評価のお店に勇んで突撃したとします。他者評価とは言え「美味しいはず」という「基準」が自然と心中に設定されてしまうでしょうから、その期待値は本来、冷静に判断すべき各種条件をないがしろにして跳ね上がってしまいます。

 通りすがりでたまたま入ったならば十分に「旨い」と思える味であっても、事前に入手した評判が余りにも高いために、不当に点が辛くなってしまう…本来なら「価格」「味の方向性」を理解して、例え自分の舌に合わなかったとしても「仕方がない」で済む話が、上げすぎた「合格ライン」故に承服できなくなってしまうのです。

※買ったら買ったで気になるのはコレ??

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海外の「ムーンスウォッチフォーラム」に見る混沌

 今回「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」を手に入れる道程で、アチコチの情報に触れる機会がありました。特に海外の腕時計掲示板では活発で忌憚ない意見が交わされており、そこには普段の私が「腕時計関係」で目にする物とは、明らかに異なる事情があることに気が付きました。ある程度、腕時計に精通した方なら特に問題視しないであろう事柄で、何やら異様に非難されていたのです。

良いっすよ~「SUN」(https://www.swatch.com/ja-jp/

 例えば「こんな安っぽい時計は『オメガのムーンウォッチではない』」みたいな意見。その通りです。『それはオメガのムーンウォッチではありません』としか言えませんよね??腕時計愛好家の方なら一瞬で両断できるような意見ですが、それが恐らくは真顔で取り交わされているのです。

※安っぽいかどうかは、コレを読むがよい(笑)

 いないと思います。いないと思いますが…一応書かせていただきます。「ムーンスウォッチはオメガのムーンウォッチ」ではありません。ついでに書くと「スウォッチが作ったムーンウォッチ」でもありません。「ムーンウォッチ」の…というか「オメガのスピードマスター」に加わったニューファミリーでもありません。

 スウォッチとオメガという同じグループ内だからこそ可能になった「奇跡のコラボレーション」によって生み出された「ムーンスウォッチ」ではありますが、どこまで行っても所詮は「企画もの」です。

 

「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」は有名店監修のカップ麺??

 良い喩えが浮かんできませんが…どこぞの有名ラーメン店の味を再現した「カップラーメン」がありますよね??私も興味本位で買ってみたりします。少々意地悪く「知ってる味」にどれだけ近付いているかを確認したくなるのです。そしてその試みは尽く裏切られる…個人的には今後も、カップラーメンがお店の味に肉薄することはないだろうと思います。故に大した期待もしていません。

 「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」も同じです。元ネタの「オメガ スピードマスター(ムーンウォッチ)」の味を再現すべく知恵を絞って「オメガさん監修」のラベルを貼ったところで「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」「オメガの時計」になることもなければ「本物のムーンウォッチ」になることもないのです。

 だからといって「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」がダメなわけではありません。カップ麺にはカップ麺の美味しさがあります。一杯1,000円もする有名店のラーメンよりも「サッポロ一番」が食べたいときがあるのです。「監修もの」が元ネタに及ばないとしても「まぁコレはコレでアリ」と思わせることができたなら、商品としての価値は存在します。そういう意味で言えば「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」「十分、合格ラインに達した商品」だと言えるでしょう。

※塩だけは常備しています(笑)

 

客層の違いで生まれた誤解

 「こんなものはスピードマスターじゃない!!」といってオメガさんを責めるのも筋違いです。「監修もの」のラーメンが不味かったからといって、元のお店を非難しては可哀想です。カップ麺なんですもん。限界がありますから。

 価格と客層というシビアな「限界点」を考えれば「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」というプロダクトは素晴らしいものです。高級腕時計に興味を持たない層に向けて「ムーンウォッチ」という「腕時計界屈指のアイドル」を知らしめた功績だけでも、特筆すべき企画だったと思います。私なんか「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」よりも先に「ムーンウォッチ」を買っちゃいましたからね(;´∀`)

 ですが…この「客層」の違いが様々な「誤解発生」の根底にあるのだと思います。例えば「数日使っただけで風防に傷が付いた!!」みたいな意見もありました…腕時計に詳しい方なら「そりゃあアンタ、プラ風防やからな!!」で終わりでしょう。「サンエーパールで磨けや!!」と辛口のアドバイスをする人もいるかも知れません。

※スピマスオートの風防はこれで復活させました!!

 

順調に見える「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」の戦略

 そうなんです。「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」が相手にしているのは、腕時計の知識層ばかりではないのです。単に流行りのアイテムとして捉えている「トレンド重視」の人も沢山いることでしょう。つまり、メーカーの事情や何やらを鑑みて「寛大に許せる腕時計の智者」ばかりではないということです。

 スウォッチさんの客層とオメガさんの客層がかつてないレベルでフュージョンを果たした結果、そこに価値観の衝突、或いは亀裂が生じている…それが海外の腕時計掲示板で交わされる「イマイチ噛み合わない議論」の正体ではないでしょうか。

 スウォッチさんの狙いを想像すると、消費者の「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」への興味をそのままの勢いで「スウォッチ全体」へ取り込みたいでしょうし、対してオメガさんの狙いは、これまで高級腕時計と接してこなかった「未発掘」の消費者層に向けて「オメガ」というブランドの魅力を発信することだったはずです

 ブランド最大のアイドル「ムーンウォッチ」「ネタ」として提出するという「賭」は、これまでのところ無駄のない「インサイドベット」に見えます。少なくとも「ムーンスウォッチ騒動」の最中に「ムーンウォッチ」を買った馬鹿野郎がここにいるワケですからね(笑)

 

それは「オメガ」でも「ムーンウォッチ」でもない

 「オメガのムーンウォッチが3万円台で買える」…こんな感じの見出しを某サイトで見ました。途中まで読み進めれば「そういうことじゃない」と解る作りでしたが、イノセントな消費者が、こういった釣りの題目を真に受ける可能性もゼロではありませんし、そうした「間違った認識」を持ったまま手に入れた「ムーンスウォッチ」は、どこまで行っても購入者の期待を満足させることはないでしょう。それは「スウォッチ」「消費者」双方にとって、大変不幸な事態です。

そもそもの価格の差を考えたら…

 「ムーンウォッチ」「88万円」「ムーンスウォッチ」「3万3550円」。天地がひっくり返ってもこの2つが同じ土俵に上ることはないでしょうし、同じ基準で語られるはずもありません。ですがダイヤル上部にそれなりの存在感で記された「オメガのロゴ」は、その直下の「スウォッチのロゴ」を覆い隠してしまうのかもしれません。それこそが、オメガさんのブランドとしての「実力」なのは間違いありませんが、ここに記された「OMEGA」「なんちゃってムーンウォッチ」の完成度を高めるための「ギミック」に過ぎません。

 

 

ムーンスウォッチ購入後に「ガッカリ」しないための心構え

 「chrono24」さんのマガジンにDonato Andrioliさんが書いた「ムーンスウォッチ」に関する記事があります。そこには基本的な注意として「ムーンスウォッチは高品質な高級時計ではない」「オメガのムーンウォッチの代替品にもなり得ない」とあります。ワザワザ喚起することでもありませんが、とりあえずこれが第一歩です。

 「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」を最大限、何のわだかまりもなく楽しむためには、購入する前に(後でも間に合う!!)この大前提を心に刻んで、誤解の無いように気を付けましょう。

 そこさえ不動にしておけば「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」ほど楽しく、遊び心を感じられる時計も珍しいでしょう。単にオメガさんとのコラボに惹かれたという理由だけでも構わない。「スピマス」っぽい時計を経済的なダメージをできるだけ抑えてコレクションに加えたい…そんな理由だって良いのです。「コレはオメガのムーンウォッチではない」と理解した上で使うなら、誰に何を言われようとも楽しめば良いのですから。

 この可愛らしいオマージュ作品は、奇妙な色、そして目新しい素材で再現されたオマージュであるからこそ、そこに特別な価値があるのです。本家に比べて安っぽい作りを「心底可愛い」と思えるなら「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」は貴方にとって忘れられない時計になるかもしれません。

 ですが…もしも貴方が日頃から「チープカシオなんてゴミ!!」とお考えの「高級志向」の方なら、同様に「チープ」がコンセプトでもある「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」に対しても「負の感情」を抱くかもしれません。「スウォッチ」「オメガ」が組んだことに対して懐疑的な目を向けてる方にしてみれば、このプロダクトは取るに足らない「ゴミ」にしか見えないかもしれません。そんな方々にとっての「3万3550円」は決して安くはないでしょう。同じスウォッチさんの時計でもSSケースを採用した「アイロニー」を購入した方が納得できるかもしれません(;´∀`)

 

ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)は「精密なミニカー」

 「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」に対する「有名店監修のカップ麺」という私の喩えは、スウォッチとオメガという二つのブランドの関係性を単純化するには悪くなかったと思います。ですが、この「ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)」という「良く出来た腕時計」に対する言い回しとしては失礼だったかもしれません。

 オメガのスピードマスター「ムーンウォッチ」とスウォッチの「ムーンスウォッチ」の関係性をもう少し上品に比喩するなら「本物のクルマ」「精密なミニカー」でも喩えることが可能です。

 本物のフェラーリをお持ちの方が、同じモデルのミニカーを買ってしまうこともあるでしょう。フェラーリがお好きだからこそ、はるかにスケールダウンした「そっくりさん」「本物」のカップリングに、言葉にできないエモーションを感じると思います。

コレだけ「っポイの(本物含む)」が揃うと「可愛い」としか言えません(笑)

 当然、ミニカーに人間は乗れません。価値だって天地の開きがあります。ですが健気にも、本物と同じく4つのタイヤで地面を走ってくれるのです。そこには「本物そっくりだからこそ」の価値があります。

 また、先に「憧れの本物」そっくりのミニカーを手に入れて、その後、本物のフェラーリに到達する方もいらっしゃるでしょう。それは生涯忘れ得ぬ、特別な思い出になるはずです。このようなストーリーが「ムーンスウォッチブーム」を通じて「オメガ」「スウォッチ」の間で起きるとすれば、腕時計界隈では珍しいケミストリーだと言えないでしょうか??

 ミニカーにはミニカーとしての「独立した価値」があります。「ムーンスウォッチ」もそれは同じ…ミニカーがミニチュアであっても「フェイク」とは呼ばれないように、本家とは土俵違いで生まれた「ムーンスウォッチ」には「ムーンスウォッチ」なりの楽しさと価値があるのです(*´∀`)

 

ムーンスウォッチ(オメガスウォッチ)は「ワクワク」の権化だ!!

 もちろん、流行っているからといって、考えなしに手を出すには「3万3550円」は高すぎます。オメガさんの腕時計が持つ「高級さ」を求めてのことでしたら、この「ムーンスウォッチ」はその役目を果たせる時計ではありません。

 ですが、スウォッチさんが仕掛けたびっくり箱のような企画そのものに共感し、生み出された「ムーンスウォッチ」というちゃちな時計の佇まいにくすぐられる「何か」を感じた方でしたら、キャンディーのように賑やかなカラーをまとった「ムーンスウォッチ」「大人の余裕」で使えるかもしれません。

 老婆心フルスロットルで色々書かせていただきましたが、欲しい方は臆せず行っちゃって下さい。まだしばらくの間は、購入の苦労が付きまとうかもしれませんが…(汗)

 最後に…「サン」を手にすることができた私からは「正直、このお値段でこんなにワクワクする時計もないですよッ!!」とだけ、お伝えしておきます(*´∀`)

※買ったら買ったで気になるのはコレ??

※ムーンスウォッチ関連記事は以下のリンクからどうぞ~(*´∀`)

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