腕時計喫茶

「微妙」な時計を愛してる

【ムーン スウォッチ】月光は人の心を惑わせる…「Mission to Moonshine Gold(ミッション トゥ ムーンシャイン ゴールド)」

 満月を見上げる都度、とある少女漫画を思い出します。タイトルは「イティハーサ」。作者は水樹和佳子先生。「目に見えぬ神々」「目に見える神々」が存在する世界を舞台に、それぞれを信仰する民同士の交わりを得も言われぬ筆致で描いた、私の大好きな作品です。

 内容についてはできれば読んでいただきたいですし、ぐっと堪えて詳しくは書かないことにしますが…美麗の青年「青比古」が月明かりの下で自らの宿命について語るシーン。これが切ないほどに美しく、満月の日に空を見上げたならば、必ずそのシーンとセリフが脳裏に浮かぶのです(*´∇`*)

 

 だけどこれからは、違う何かのイメージが浮かんでくるのかもしれません。そう…「Mission to Moonshine Gold(ミッション トゥ ムーンシャイン ゴールド)」のことでございますよ(;´∀`)

 

「Moonshine」は人の心を惑わせる??

出典:https://www.swatch.com/ja-jp/

 古来より、月光は人の心を惑わせると言われてきました。だからこそ件の作品のような美しくも切ない芸術が生まれるわけですが…今回の(も!!)「Mission to Moonshine Gold(ミッション トゥ ムーンシャイン ゴールド)」の販売方法は、美しい満月に似つかわしくない、何とも稚拙な手段でした。

 2023年3月7日、販売拠点となった東京・日本橋の「KABUTO ONE」には大行列ができたそうで、数時間並んで結局買えなかった方も大勢いらっしゃるとか。目前で「売り切れ」を宣告された瞬間には怒号も響いたそうで…(;´Д`)

 まぁ何にせよ、平日に頑張って並んで目的を達成された方、まだまだ肌寒い中お疲れさまでした!!執念が実りましたね!!(*´∀`*)

 

 そもそも私の記憶が確かならば「オメガ スウォッチ(ムーン スウォッチ)」って、販売の初期段階でもやらかしてましたよね??

※関連の過去記事はこちら!!

 警察が出動したり後日抽選を行なったり、てんやわんやだったと思うのですが…と、自分の記憶の方を疑いたくなるほど、3月7日発表の新作「Mission to Moonshine Gold(ミッション トゥ ムーンシャイン ゴールド)」のお披露目も前回同様、些か「配慮と公平を欠く」ものではなかったかと思います。わざわざ行列作らせる必要なんてありませんよね??いやまぁ、ホント~に学ばないよなぁ…スウォッチさん(;´Д`)

 

 そもそも売り文句の一つ「2月の満月の夜に作りましたー!!」って、ライフのお総菜コーナーで夕方に見る「4時以降に作りましたシール」みたいなものですかね??なんのプレミアムなのかさっぱり解らないんですが…何か凄いのかしらん??

 

ムーン スウォッチの新作自体は歓迎したい

出典:https://www.gqjapan.jp/ https://www.swatch.com/ja-jp/

 私も腕時計ブロガーの端くれとして「オメガ スウォッチ(ムーン スウォッチ)」の動向を絶えず追ってきました。その結果から言えば、確かに今年に入ってから明かな停滞がありました。要するに、消費者の心中から「オメガ スウォッチ(ムーン スウォッチ)」に対する「枯渇感」或いは「焦燥感」が失われてきたのです(;´Д`)

 

 「腕時計喫茶」のような弱小サイトであっても「Googleアナリティクス」「サーチコンソール」を見れば、訪問者の動向が手に取るように解ります。それによると「オメガ スウォッチ(ムーン スウォッチ)」のモデル名や型番を決め打ちで検索して、弊サイトに到達して下さった方の数は、騒ぎの前後とは比較にならないくらい少なくなっていました。各種データが如実に語っています。「今まさにコレが欲しい!!」という渇望のようなものは、確実に薄まっていたのです(;´∀`)

 

 私がそう思うくらいですから、当然「スウォッチ」さんだって把握していたでしょう。もちろん、この未曾有の「大ブーム」を可能な限り延命するため、企業をあげての試行錯誤を繰り返していたはずです。そこで目論んだのが、まるで「コーラにメントス」を入れるかのような刺激的なテコ入れ策「Mission to Moonshine Gold(ミッション トゥ ムーンシャイン ゴールド)」の発表だったのでしょう。私にしても「そろそろ来るんじゃないか」と予測していましたから、新作発表自体は「よっ!!待ってました!!」でした(*´∀`*)

「Mission to Moonshine Gold」またしても「転売ヤー」の餌食に

出典:https://www.swatch.com/ja-jp/

 問題は「売り方」です。なぜ平和裏に「欲しい人に届ける」という真っ当な考えに至らなかったのか。そもそも東京に住んでいたって仕事や学校で買いに行けない人が沢山いるのに、地方在住の方なら尚更ですよね??

 案の定、前回同様に転売ヤーの物量作戦に飲み込まれ、不当に高値を付けられた「Mission to Moonshine Gold」がメルカリ界隈に溢れる始末です。何だこのディストピアは!!これが望みか!?スウォッチさんよぉ!!

 どんな組織でも製造部門と販売部門の間には大きな壁があるものです。恐らくはスウォッチさんも同様なのでしょう。売れるなら「手段は問わない」販売部門の意向に対して、製造や企画が感傷的な口出しをしたところで、話が噛み合うとも思えません。

 ですが、腕時計好きとしてハッキリさせておきます。プロダクトとしての「オメガ スウォッチ(ムーン スウォッチ)」は、本当に本当に「面白い時計」です。それだけは間違いありません(;´Д`)

 

 もちろん、製造部門の願いも「売れてくれ!!」でしょう。ですが同時に、自分たちが作った製品を「大切に使って欲しい」「愛して欲しい」と思っているはずですよね??少なくとも本来の定価から大きく逸脱した価格で販売し、不当な利益をむさぼる「転売ヤー」の懐を潤わしたいなんて、そんな不埒なことは考えていないはずです。

 販売部門にしても、根っこはそうなのかもしれません。最初の失敗から何も学んでいない部分に関しては正直、擁護のしようがありませんが「できるだけ沢山売りたい」「同時にブランドの価値を高めたい」という、企業としてすこぶる純粋なビジネスマインドを行使しただけなのでしょう。だからこそ「満月の夜」なんてポエムな見出しを立て、ちょっと恥ずかしい企画感丸出しの販売手法を実行に移したのだと思います。

 

 そこに苦言を呈する気はありません。強いて言うなら、彼らには商売人として結果を遠見する「想像力」が欠けていました。前回の騒ぎから得た教訓も一切生かされなかった。常識的に考えれば、今回、最初に実行すべきは「行列させない販売方法」を確立することだったはずです。

 

もっと紳士的な「販売手段」もあったはずでは??

出典:https://www.swatch.com/ja-jp/

 例えば発表当日、店頭では実機の展示のみを行ない、購入希望者を抽選で募る。それを「札幌」「仙台」「東京」「名古屋」「大阪」「四国のどこか」「福岡」辺りで同時に行なうことくらい、スウォッチさんならできたはず。キャンペーンカーを漫遊させて「全国津々浦々な感じ」を醸成しておいて、新型の発表が東京のみでは…そりゃあ不公平感が募るってもんです。地域格差を無くそうとしているのかと思いきや…これですよ(;´Д`)

 

 ここで一つの「残念な仮説」が成り立ちます。この不公平な状況をスウォッチさんが進んで「企図したもの」だとすれば、今後もおよそ「月に一度」のペースで、今回のような規模の狂騒が繰り返されるかもしれません。欲しいのに買えない、並んでも買えないの繰り返しは、ムーンスウォッチへの渇望を煽るでしょう。そんな「ブームの第二章」を起こすことが目的だとすれば…

 さすがにそんな風には思いたくありません。キャンペーンカーの存在が消費者の心に「そのうち買えるから」「望ましくないゆとり」を生み、そのことに当のスウォッチさんが「やべっ!!」と思っていたとしても…です(;´∀`)

 

「Mission to Moonshine Gold(ミッション トゥ ムーンシャイン ゴールド)」は罪深きプロダクトだ!!

出典:https://www.swatch.com/ja-jp/

 付加価値として「2月の満月の夜」に意味はありません。それはどちらかといえば幻想に属する類の言い回しに過ぎないですし、1月の新月の日に作ろうが中秋の名月の日に作ろうが、何も特別なことはありません。ただ、その際に作られた「特別なパーツ」には「確かな価値」があります。

 それがオメガ独自の手法「ムーンシャイン™ コーティング」を施された「黄金のクロノ針」。2月の満月の日に製造され、ご丁寧なことにその事実を記した証明書まで付いてくるそうです。これは厳然たる「付加価値」ですし、さぞやお値段にも跳ね返るはず…と思いきや、僅か「3300円の上昇」に留まりました。そこはそれ…スウォッチさんですからね(;´∀`)

 

 今作に至る「新しいムーンスウォッチ」の噂は、腕時計界隈のみならず、多くの一般層を巻き込む形で数々の「予想」を生み出しましたよね??私自身も「ゴールドっぽい」ケースのモデルが出るのではないかと固唾を飲んでいました。安っぽいメッキ仕上げであっても、スウォッチならむしろチープで楽しいものが出てくるんじゃないかと考えたりもしました。

 ただ、ビビってもいたのです。だって私…「MISSION TO THE SUN(SO33J100)」のオーナーなんですもん。

出典:https://www.swatch.com/ja-jp/

 その情報に初めて触れたとき、膨らんだイメージは勝手な心配となって私を襲いました。要するに「もしかして『サン』の立つ瀬、無くなるんとちゃうの??」と嘆いたのです。「ムーンシャイン」と聞けば、どう考えても「金か黄」の何かが来るって感じがするじゃないですか??いや!!ちょっと待って欲しい。ムーンスウォッチの「キレンジャー ポジション」には、すでに「サン」の兄貴が居るんですけど!!…ってね(;´Д`)

 実際は「ミッション・トゥ・ザ・ムーン」「金針」を加えただけのモデルで安堵しました。針を買えただけで「新作」として良いものか…一般論で考えたらおかしな話ですが、腕時計なんて、ハナからそんなものですよ(笑)普通に格好良い時計出してきたなぁ~って思いますけどね(*´∇`*)

 

 ちなみに、スウォッチさんは言及していないものの、今のところは「3月7日」にのみ買えた「限定モデル」だった「Mission to Moonshine Gold(ミッション トゥ ムーンシャイン ゴールド)」。まぁいずれは増産されて、どこぞの「満月の日」に人の心を惑わすのでしょうが…罪だなぁ~(;´∀`)

 

「ムーンシャイン コーティング」使用は「禁断の果実」??

「SPEEDMASTER(310.60.42.50.99.002)」出典:https://www.omegawatches.jp/

 オメガ最大のアイドル「スピードマスター プロフェッショナル(ムーンウォッチ)」を模して作られた「ムーン スウォッチ(オメガ スウォッチ)」「パクリ」だ何だと大っぴらに揶揄されない理由は、それが「間違っても本物のムーンウォッチには見えないから」だったと思います。バイオセラミックを使って成形された外装は非常に良くできていますし、よくぞここまで似せたもんだと感心もしました。ですが、やはり「スウォッチ」です。本物のムーンウォッチとの間には「絶対に越えられない壁」があって、だからこそそれほど正面切って「パチモン」扱いされることもなく、絶妙な立ち位置をキープできていました。

 ですが…やっちまったのかもしれません。本家スピードマスターですら「スピードマスター ムーンウォッチ ムーンシャイン ゴールド」といった一部のモデルでしか使われていない素材「ムーンシャイン ゴールド」を与えてしまったのですから。

 本家においても「贅沢の極み」であるオメガの独自素材を、針の一本とは言え施すことで「ほのかなクラス感」を纏うことになった「Mission to Moonshine Gold(ミッション トゥ ムーンシャイン ゴールド)」。これは英断か暴走か…それこそ「針の穴」のように小さなことに思えるかも知れませんが、私にはスウォッチグループの全体方針が、オメガというセクションの方針を凌駕した瞬間に見えました。

 

 コラボレーションには越えてはならない一線…一種の「紳士協定」があって、それぞれの「格」を貶めるような「合体」に意味はありません。例えば、大枚叩いて「スピードマスター ムーンウォッチ ムーンシャイン ゴールド」を購入した人が「新作ムーン スウォッチ」を見たとしましょう。中々複雑な心境になると思うのですが…どうでしょうか??

 禁断の「素材流用」に走った「ムーン スウォッチ(オメガ スウォッチ)」が次にどのような「禁じ手」を使ってくるか…見たいような、見たくないような…(;´Д`)

次の「展開」にも期待しよう!!

出典:https://www.swatch.com/ja-jp/

 まぁ…私自身、本家「ムーンウォッチ(スピードマスター プロフェッショナル)」のオーナーとしてモヤモヤする部分はあります。「これ以上は弄らんといて~(汗)」みたいな意味で。ですが、年がら年中、何でも良いから「オモロイ時計」を見たいと切望するのが腕時計好きと言うもの。やっぱりねぇ…期待しちゃいますよ。今後の「ムーン スウォッチ(オメガ スウォッチ)」の展開、一体、どんなモデルが我々の目の前に届けられるのか…

 

 今回の「ムーンシャインゴールド」は、その字面から「金色か黄色い何か」を予測した方が圧倒的でした。前述した通り、私も同様です。

 で、次の仕掛けですが…今回は「満月」でしたからねぇ。となると次はやっぱり…「新月」でしょ!!(安直!!)

 つまり、光届かぬ暗黒をテーマにした「ニュームーン」シリーズの「爆誕」ですよ!!(*´∀`*)

 要するに、これまでに誕生した「レギュラー版ムーン スウォッチ」各モデルの「ダークカラー バージョン」が出るんじゃないか…みたいな予想です(*´∇`*)

 だってほら、満月で引っ張れるのって「ミッション トゥ ザ ムーン(Mission to the Moon)」だけじゃないですか??地球より太陽に近い惑星なら満ち欠けが見えるはずですが…小さすぎてね…無理があると思うんです(汗)

 

 ってことで、元のケースやダイヤルの色味を僅かに残し、全体的に「シャドー」を効かせた「11種類の渋いムーン スウォッチ」…むむむ、想像するにめっちゃラグジュアリーな何かが生まれそうで、ワクワクしちゃうんですが!!(*´∇`*)

 

最後に

 毎度、その「売り方」自体にはセンスを感じない「ムーン スウォッチ(オメガ スウォッチ)」ですが、チープな腕時計界隈でこれ以上にセンスのあるコラボもそうそう見当たりません。これだけ多くの消費者を虜にしているのが証拠でしょう。

 取り敢えず「次の満月」に向けて集中を切らさないようにしなくてはいけませんが、そして次の販売こそ、本当に欲しい方々に届く手段で売ってほしいものです。

 ブームには必ず終焉があります。スウォッチさんが進めるべきは「ブーム後も継続して応援してくれるファン層の獲得」だと思いますし、それには消費者の目に見える形で、スウォッチさんが提供する「ホスピタリティー」を示す必要があるでしょう。信頼を獲得して、強固なユニバースを作り上げること…一朝一夕で成せることではありませんが、スウォッチさんならやれると信じています。

 

 まぁ、これだけの「味を占め」ましたから、手っ取り早く新たなブーム…グループ内の著名なモデルの「名前を拝借した何か」が出てくると考えるのが自然でしょうけどねぇ…二番手はブランパン コラボ「フィフティ ファゾムスウォッチ」ですか??…

 「機械式本家」のブランパンさんが「クオーツのファゾムス」を許すとは思えませんが…出たら間違いなく欲しいかも…(;´∀`)

 

 ではまた今度!!「次の満月」で世界中のファンと一緒に「モヤモヤ」しましょう!!(笑)