創業年が1992年だから、その時間的な歴史はたかが知れている。しかし、「Bell&Ross」のようなブランドは「歴史」が時間の積み重ねによって作られるものではないことを教えてくれる。
ドクロの眉間から伸びるハンドが禍々しい「BR01-92-SKULL-BURN」
時計オタクの工業デザイナー、ベラミッシュ(ベル)と銀行で経営のキャリアを積んだロシロ(ロス)が、自らの理想の時計を作るためにパリにスタートさせたブランド「Bell&Ross」
とはいえ当初は、時計作りの情熱はあってもただの素人。ファンとして常に注目していた「SINN」の技術協力を(押しかけ的に)取りつけた。そして98年には、シャネルのパートナーとして華々しく世界に名を馳せることになる(何というロケットスタートか!)
98年発表の「ヴィンテージ」などには「SINN」の影響が色濃く残っているものの、05年に発表した「BR01、BR03」は航空機の計器をそのまま切り取ったような斬新(強引ともいえる)なデザインで、唯一無二の時計を作るブランドとして、その地位を確固たるものにした。
一度見たら忘れない強烈な個性が魅力だが、決してそれだけではない、所有者にしかわからないかもしれないが、「モノ」としての完成度も素晴らしい。ケースの磨き、ネジ類の一本一本、ダイアルの仕上げ、インデックスの書体のセンスの良さなど、上げればキリがないが、持つ喜びを最高に高めてくれる一品だと思う。
確かに「ロレックス」のように他人様に褒められることはないだろうし、正直服装は選ぶ。所詮積んでるのETAでしょ?とか言われることもあるかもしれない。
だけど、NATOのパイロットが使っていたり、宇宙や深海にもお供可能なハイポテンシャルな時計なのだ。そしてなにより四角くて「可愛い」。「KAWAII」は正義じゃないのか?特にこの日本では。
ちょっといい時計は欲しいけど、ロレもオメガもオッサン時計だしなぁ~と感じている個性的なセンスを持つ(クリエイティブな仕事をしている)人なら、ぜひ一度ショップで試着してみて欲しい。見た目とうらはらなつけ心地の良さに、驚くはずだから。そしてその存在感に欲しくなること請け合いだ。